最新のがんの治療法を受けられる病院近くに引っ越したばかりの頃に右下の親知らずが虫歯になって、急に痛みが出てきたので今まで行ったことのない歯医者さんに行きました。痛いので、大阪近郊でどの歯周病歯医者さんがいいか評判も聞かずに、その時に診てくれる所だったら何処でも良かったのです。そこは小さな所で、若い歯医者さんが一人と看護師が一人いるだけでした。看護師さんは受付や会計もやっていました。歯医者さんは私が痛い所だけを言うと、後は何も聞かずに歯を診てくれて「親知らずだし、歯が斜めに生えてきていてあっても仕方がないので抜きましょう」と言いました。その時は痛いので、抜こうが何をしようが今の痛みから解放されればそれでいいという気持ちでした。「はい」と頷くと、歯医者さんは麻酔の注射をしました。あれは痛いですね、でも麻酔なしでは無理なので、じっと我慢して耐えました。そうして麻酔が効いてくるだけの時間が経って、いよいよ抜こうとしました。しかし、麻酔が効いているにもかかわらず「痛い」と言いました。すると歯医者さんは、「おかしいなあ」としきりに首をかしげていましたが、ややあって、「好きな曲とかありますか?」と聞いてくるのです。で、いくつか好きな曲を言うと「ああ、それならあります」とか言いました。看護師さんがどこかへいなくなると、その私の好きな曲がかかってきました。その曲を聴いているうちに、無事抜歯ができたのでした。なので、歯医者さんが唯一聞いたことは、歯の事ではなくて「好きな曲」だったのでした。